第13章 - ホーム

喜びの翌朝に歴史がいつまでも残ることは滅多にない。戦争や洪水、王の戴冠や王国の滅亡は記憶に残るが、愛が初めて芽生えそうな静かな時間は忘れてしまう。しかし、そんな時こそ、世界は最も保存する価値があるように思える。リノーラもそうだった。前の夜は笑いと発見に満ちていた。蹄の音、ランプの揺らめき、こんなに長く握るとは思ってもいなかった手の温もり。
彼女はリネンの掛け布団の下で身動きをし、曲線を描く木の壁の形に目を瞬いた。板の間から差し込む陽光が、木材をかすかに金色に輝かせていた。頭上では、鳩が垂木の間を音を立て、羽根を振り払いながら、優しく鳴いていた。空気はおがくず、ピッチ、そして新鮮な藁の匂いが漂っていた。それは仕事と人生の匂いだった。まだ終わっていないけれど、耐え抜こうと決意した何かの匂いだった。
暖炉の近くで、鍋がかすかに擦れる音。すると、ロシムの低い声が聞こえてきた。ゆったりとした、調子はずれだが満足げな声だ。リノラはしばらくじっと横たわり、耳を澄ませた。一つ一つの音――火打ち石の柔らかな打ち付け音、鉄に油が擦れる音――が、彼女の心に深く突き刺さってくるようだった。この瞬間がずっと続くことを願い、目を閉じていても安心した。
彼女が立ち上がると、裸足の床は冷たかった。ロシムは小さな焚き火のそばでしゃがんでいた足から顔を上げた。口角に笑みが浮かんでいた。「鳩が君のいびきより長く鳴き続けられるかと思っていたんだ」と彼は言った。
彼女はにやりと笑って、頬に散らばったカールを払いのけた。「あなたのあざを綺麗に保ってくれる女性をからかうなんて、勇気があるわね」
彼はフライパンを指差した。「それなら、君の好意を失わないようにしないと。怪我をしていない時は、美味しい朝食を作るからね。」
二人の間には、心地よい暖かさが漂っていた。フライパンの上で、薄いケーキが焼き色をつけ、その横には砕いたイチジクが入った土鍋があった。湯気が渦巻き、甘みを帯びて煙と混ざり合っていた。
彼女は彼の向かいの低いベンチに座り、チュニックの下に足を隠した。「獣の言葉が話せる人が料理もできるなんて知らなかったわ。」
彼は肩をすくめ、木の板でケーキを一つひっくり返した。「私たちはみんな、生き続けるために必要なものを学ぶ。それは言葉のこともあるし、食事のこともある。」
ロシムは彼女にケーキを一つ手渡した。温かくて柔らかく、中には隠された陽光のようにぎっしりと詰まったイチジクが入っていた。彼女は一口かじって笑った。「塩を忘れたわよ」
彼はわざと怒ったような顔をした。「それとも、都会の市場と母親のスパイスへのこだわりに甘やかされて育ったのかね」
笑い声が余韻を残した。ほんの少しの間、この場所はまるで我が家のようだった。木の温もりと、そして数奇な運命によって出会った二人の魂の静かな交わり。
朝は穏やかで明るくなり、梁にとまったカラスたちは、まるで上の方で噂話でもしているかのように鳴き始めた。ロシムは足を組んで座り、膝の上に粘土の円盤を乗せ、ケーキを細かく裂いていた。
彼らは長い間、些細なことについて語り合った。鞍を拒む頑固な牝馬のこと、羊たちがまるで人間の仲間を羨むかのようにランプに群がる奇妙な様子のこと。しかし、リノラがイチジクをもっと手に取ろうと手を伸ばした時、彼は自分の手で彼女の手を押さえた。
「考えていたんだ」と彼は言った。目の輝きが少し鈍った。「昨晩のこと。私たちのこと。」
彼女は少し身を引いて、彼の顔をじっと見つめた。「後悔してるの?」
彼は首を横に振った。「いや、そういうことじゃない。でも…」視線は梁をすり抜ける光へと移った。「待つべきだったんじゃないかと、心のどこかで思っていたんだ。兄の心は君に傾いている。僕は見て見ぬふりをしたんだ。」
その言葉は静かに響いたが、重みがあった。リノラはテーブルを見つめ、表面の埃を指でなぞった。「それは遠い昔のことよ」と彼女はようやく言った。「彼は私と同い年で初めてまともな弟子になったのよ」
彼女は話しながらロシムの目を見つめた。そこに疑いの念が宿っているのを感じ取った。
「本当に、大したことはなかったの。彼は私にとって兄弟みたいなものよ」彼女はロシムに少し、そして自分に少し嘘をついた。これで全てが終わることを願った。
ロシムは静かに彼女を見つめ、それから小さく疲れた笑みを浮かべた。「でも、私にとっても彼は兄弟みたいなものなんだ。もし本当に君の手を握りたいのなら、簡単にはいかないだろうね」
二人の間に沈黙が広がった。煙を透過する光のように、かすかな沈黙だ。そして彼はため息をつき、緊張が解けた。「彼に受け入れる時間を与えよう。神聖なことを叫ぶ必要はない。」
彼女は再び彼の視線を見つめ、そこにあったのは優しさだけだった。要求も、プライドもなく、ただ気遣いだけ。「わかったわ」と彼女は言った。「しばらくはね」
彼は微笑むと、二人の間の重苦しさが和らいだ。テーブル越しに身を乗り出し、彼女にキスをした。息を呑むほどの熱狂的なキスではなく、静かな絆、言葉にしない約束のキスだった。
片付けが進むにつれ、空気が変わった。ロシムは小麦粉のボウルに手を伸ばし、白い粉を袖の方へ飛ばした。「ほら、これでちゃんとした料理人になったわね」
リノラは息を呑み、まるで怒ったように嘲り、背後の屋台から藁を一掴み取って仕返しした。藁は彼の髪に絡みつき、金色に光り輝いた。彼は笑った――その若々しく無防備な笑い声が空気を満たし、鳥たちを散り散りにさせた。
彼らは斜面をゆっくりと下り、出発前に分娩室の様子を確認するために振り返った。室内は静かで暖かく、生まれたての乳の香りが豊かだった。ヤルナは藁の上に丸まって横たわり、ゆっくりと、しかし着実に脇腹を膨らませていた。二頭の子羊が彼女のお腹に鼻を擦り付けていた。小さな子羊たちは、新しい命の輝きで滑らかに輝き、毛は既に乾いて白と灰色の柔らかなカールになっていた。
ロシムは彼らの傍らにしゃがみ込み、小さな棘の一つ一つを丁寧に撫でた。「強いな」と彼は呟いた。「どちらも。大抵の棘より一回りくらい重いだろう」彼は片方を軽く持ち上げ、静かに頷いて重さを確かめてから、元の位置に戻した。「よくやった、ヤルナ」
雌羊は頭を向けた。疲れた目は半分閉じられていたが、用心深く、子羊の一匹を舌で優しく撫でていた。リノラは見守っていた。そのシンプルな優雅さに胸が高鳴った。命が儀式もなくやって来ること、気遣いがまるで疲労困憊のように見えること。指が牛舎のざらざらした梁を撫でた。「この子はいい家を見つけたわね」
太陽が高く昇る前に彼らは出発した。空気はまだ冷たく、かすかに杉の香りが漂っていた。リノラは馬の横を歩き、たてがみを撫でながら、ロシムは慣れた手つきで鞍の紐を調節した。
「この方がいい」と彼は軽く言った。「ペンの点検に来たと思わせればいい。ナハラだって、少しの勤勉さには異論を唱えないだろう」
彼女はそのふりをしてくれたことに感謝して微笑んだ。二人は一緒に屋敷へと向かう坂道を横切った。背後の木造の街が遠くでかすかに輝いていた。
彼らが到着した時、中庭は活気に満ちていた。鶏たちは飼葉桶の近くに散らばり、荒々しい男がオムリに餌をバケツで運ぶ声を掛けていた。ロシムは静かな自信をもってその中を進み、動物たちはまるで言葉か触れ合いを期待するかのように彼の方を向いていた。リノラは愚かにも軽やかに、すぐ後ろをついてきた。
誰かが近くを通ると、若い夫婦は用心深くなった。笑い声は小さく、視線は互いに交わされた。ある時、井戸端でバケツを交換していた時、二人の指が触れ合った。ロシムの手がほんの少しの間留まり、二人は無視するふりをして微笑んだ。
その後、ナハラが風になびくショールを羽織りながら庭を横切った。リノラを見ると、彼女は立ち止まり、首を傾げた。「また笑顔を取り戻したみたいね」と、かすかにからかうような口調で言った。
リノラは頬が熱くなるのを感じた。「あなたの動物たちは良い仲間ですね」と彼女は馬の脇腹を撫でながら、早口で言った。
ナハラの鼻歌は小さく、納得していないようだった。「なるほどね」と呟き、彼女は穀物倉庫へと歩き出した。
その後、一日はゆっくりと過ぎていった。ロシムは、落ち着きのない子牛の目の間をこすって落ち着かせる方法や、空気の匂いで収穫期が近づいているかどうかを見分ける方法などをリノラに教えてくれた。リノラは、彼の教えだけでなく、教えることへの純粋な喜びにも魅了され、話に聞き入っていた。
一つ一つの作業はゆったりとしていて、まるで世界が彼らだけのために立ち止まることに同意したかのようだった。屋敷の騒音は作業のリズムに合わせて和らぎ、木にロープがぶつかる音、藁が擦れる音、木陰でうたた寝する動物たちの低い羽音などが響いていた。
リノラは、これこそが平和の感覚なのだろう、とふと考えた。まるで生まれ変わったような世界。炎と破滅の人生ではなく、世話をし、世話をされる人生。
夕方のランプが灯ると、彼女は薄れゆく光に暗い影を浮かび上がらせた小さな部屋が待つ丘の方へ目を向け、このシンプルな生活がどのようなものかを考えた。
屋敷はまるで一日が終わらないかのように輝いていた。アーチ道のランプが揺らめき、中庭の石畳にゆっくりと金色の光を投げかけていた。ティルザとリリットが台所から料理を運び、辺りにはハーブと焼き穀物の香りが漂っていた。
長いテーブルに着くと、ナハラが上座に立ち、両手を上げて祈りを捧げていた。彼女の声は穏やかで澄んでいた。大げさではないが、落ち着いていて、どんなに簡単な言葉でさえも儀式のように感じられる声だった。リノラは他の者たちの横で頭を下げ、祈りのリズムが呼吸のように彼女の中を流れていた。食事をすると、自然と笑いがこみ上げてきた。この世の重苦しさは遠く離れたように思えた。
ナハラはパンを一切れ割ってリノラに手渡した。「牝馬の扱いが上手ね」と、半分褒め言葉、半分好奇心を込めて言った。「もう噛もうとしないって聞いたわ」
「それはロシムの仕業よ」とリノラは言った。「ロシムは、どんなに荒々しい生き物でも、あなたの声を信じれば飼い慣らせるって言ってるわ」
ロシムはニヤリと笑った。「飼いならされたわけじゃない」と彼は訂正した。「ただ、優しさは弱さではないと思い出させられただけだ」
ナハラは眉をひそめた。「その知恵は獣にも人間にも通用するのですか?」
ロシムはためらい、リノラの笑い声がその沈黙を埋めるほどの時間を過ごした。「まだ理解できていないんだ」と彼はようやく言った。
「そうですね」ナハラはカップにもう少しワインを注ぎながら言った。「あなたの研究が適切な監督の下で続けられることを祈っています。」
リノラの頬は熱くなったが、それを隠すためにパンをかじりながら笑い続けた。
夕食後、会話はささやき声や物語へと和らいだ。ナハラはいつものように半笑いで耳を傾け、年齢を重ねた重みが、いかにも権威を身につけたかのようだった。ロシムはいつものように、半分影に隠れて向かいに座っていた。彼はリノラと一度、そしてもう一度視線を交わした。二人の間には、多くを語りすぎるような沈黙が漂っていた。
家が静まり始めると、リノラは客間へと席を立った。廊下のランプは弱々しく燃え、煙は薄く香っていた。彼女はドアの後ろでランプの枠に寄りかかり、いつの間にか微笑んでいた。
部屋は変わっていなかった。織り畳、畳まれた毛布、砕いたミルラのほのかな香りが漂う。それでも、まるで我が家のように、いや、我が家が来るような予感さえ感じられた。彼女は横になり、格子の向こうの薄暗い光を見つめていた。
彼女の思考は中庭へと戻り、ロシムが牝馬の耳のぴくぴくした様子を描写する声、そして彼女が子牛を一人で立たせた時の彼の無防備な笑みへと戻った。彼女はそんなものでできた人生を思い描いた――動物たちと過ごす朝、笑い声と静かな温かさに満ちた夜。
これが休息の意味なのだと彼女は思った。
波が岸に戻るように、ゆっくりと眠りが彼女を襲った。夢の中では鳩や梁から差し込む陽光が満ち溢れ、ロシムの笑い声がどこか近くでこだまする。遠くにも近くにも響き渡るその音は、まるで世界そのものが息をひそめて、彼女に静かな夜を与えているかのようだった。
翌日は、いつもの静寂の中で過ぎていった。畑には霧が立ち込め、リノラは日々の営みに安らぎを見出した。井戸から汲んだ水、鶏に与える穀物の計量、きちんと束ねられたハーブ。農地はまるでリズムを刻んでいるようで、熊手の音、牛の低い鳴き声、ギョリュウシュスギの間を吹き抜ける風の音、一つ一つの音が次の音に呼応していた。
午後遅くになると、空気は蜂蜜のように暖かくなっていた。リノラはハーブの入った籠を腰に担ぎ、中庭を横切った。指先は葉を踏みつぶしたせいでまだ緑色に染まっていた。ロシムは厩舎の近くで馬具を繕っていた。時折、彼は背筋を伸ばし、額の髪を払い、リノラと目が合うと手を振った。ナハラは外の広間に立ち、安息日に向けて最後の準備をする召使いたちに指示を出していた。
それはとても平和な瞬間だったので、リノラは、どんな音でもそれを打ち砕くのではないかと、息をするのも怖くなったほどでした。
すると、遠くから叫び声が聞こえた。
警戒の叫び声ではないが、中庭を静めるほど鋭い音だった。彼女は振り返った。壁の向こうから、車輪の軋む音と牛の苦しそうな鼻息が聞こえてきた。金属が木にぶつかる音は、ゆっくりと重く、旅の音、荷物の音、到着の音だった。
召使いたちは門の方を視線を遮りながら、ざわめき始めた。埃が壁を漂い、夕陽に舞い上がった。リノラは心臓が高鳴るのを感じたが、すぐに意識が追い付かなかった。彼女の心の奥底で、何かが既に分かっていた。
彼女は前に進み出て、かごを足元に置いた。霞の向こうから、最初の荷車が丘の頂上に現れるのが見えた。ロープと布で縛られた荷物を積んだ荷車だ。その後ろには、もっと小さな荷車が続いていた。荷車には、道具や鉱石らしきものが山積みになっていた。
そして彼らの隣を杖に寄りかかりながら歩いているのは、彼女自身の心臓の鼓動よりもよく知っている男だった。
オレン。
彼の歩調は安定していたが、彼女の記憶よりは遅かった。旅で擦り切れた服はきちんと整えられ、髪は埃で銀色に輝いていた。彼は片手を挙げた。まるで太陽から目を守るかのように――あるいは、彼女をもっとはっきりと見たいかのように。
しばらくの間、リノラは動けなかった。世界が傾き、耳の中の鼓動の音だけが響き渡る。彼女は胸に手を当て、手のひらの下でその鼓動を感じた。
「お父さん?」彼女は息をするくらいのかすかな声でささやいた。
一瞬、世界は再びひとつになったように感じた。
召使たちは手綱に手を伸ばしながら声を重なりながら急ぎ足で進んだが、リノラは既に動き出していた。彼女は何も考えずに中庭を横切り、スカートが埃を掻き立てた。オーレンは彼女が近づいてくるのを見て、両腕を広げた。
彼女は彼の胸に倒れ込み、灰と旅と鉄の匂いを吸い込んだ。それはいつも故郷の匂いだった。彼の手が伸びてきて、荒々しく震えながら、彼女の後頭部に置かれた。
「会えて嬉しいよ、お嬢さん」と彼は言った。遠くからの声と埃で低くかすれた声だった。「期待以上だったよ」
彼女は少しだけ身を引いて、彼の口元の新しい皺、髭の白髪、目の下の疲労感を目に焼き付け、涙を浮かべながら微笑んだ。「鍛冶場を全部運んできたのね」と彼女は馬車の方へ視線を向けながら囁いた。「母さんは、あなたが家を空っぽにしたと言うでしょう」
彼は答えようとしたが、言葉が喉に詰まった。牛の息づかいが二人の間の沈黙を満たした。
それから、オーレンはゆっくりと外套のポケットに手を伸ばし、小さな木製の雀を取り出した。そしてそれを手の中で一度回してから、彼女に差し出した。
リノラの笑顔がかすれた。彼女の目は彫刻に釘付けになった――ずっと昔、ケザイアから贈られたものと同じものだった――そして、彼女は息を呑んだ。
「お父様」彼女は優しく言い、父の顔を探った。「ケザイアはどこ?」